売れなかった20代、生活にも困っていた
今では大きなステージに立ち、多くの人に音楽を届けているサカナクションの山口一郎さん。
でも、その姿だけを見ていると、そこまでにどんな時間があったのかを忘れてしまいそうになります。
2026年8月11日の「サカナクション山口一郎のオールナイトニッポン」で、山口さんが自身の20代について話していました。
この日のテーマは「人生山あり谷あり」。
山口さん自身の“谷”として語られたのが、まだ音楽だけでは生活できなかった20代の頃の話です。
飲食店で働きながら生活し、食べるものにも困るほど苦しい時期があったそうです。
そして、どうしようもなくなると、特に用事があるわけでもないのに、おばあちゃんの家へ行っていたと話していました。
何も言わなくても分かってくれていた祖父母
20代後半になっても、おばあちゃんの家へ行く。
おばあちゃんは、その理由を察していたそうです。
帰るときには、5,000円ほどのお小遣いを渡してくれる。
そして駅まで車で送ってくれるのは、おじいちゃんでした。
おじいちゃんも、なぜ孫が家に来ているのか分かっていたのでしょう。
駅に着き、車を降りるとき。
財布から折りたたんだ札を数枚出し、何も言わずに渡してくれたそうです。
そこで山口さんの中に浮かんだのが、
ここまでして、自分は音楽を続けたいのか。
という迷いでした。
夢を追い続けることは、きれいな話だけではありません。
自分一人が苦しいだけならまだしも、家族にまで助けてもらっている。
その状況になると、
「本当にこのままでいいのか」
と考えてしまうのは自然なことだと思います。
デビューアルバムを何枚も買ってくれたおじいちゃん
それでも山口さんは、音楽をやめませんでした。
そして、サカナクションとしてデビューアルバムを発売します。
そのとき、おじいちゃんがしたことが印象的でした。
近所のCDショップで、そのアルバムを10枚ほど購入したそうです。
自分で何枚も聴くためではありません。
近所の人たちに配るためでした。
孫が出したCDを買い、
「ラジオで流れていた」
「テレビに出ていた」
と、山口さんの活動を喜んでくれていたそうです。
売れていなかった時代に、黙ってお金を渡してくれたおじいちゃん。
その孫がCDを出したときには、何枚も買って周りの人へ配ってくれた。
山口さんが話していた短いエピソードの中に、祖父と孫の長い時間が見えるように感じました。
見せることができなかった紅白
その後、サカナクションは活動の幅を広げていきます。
そして、ついには紅白歌合戦へ出演するところまでたどり着きます。
おばあちゃんは、その姿を見ることができたそうです。
でも、おじいちゃんは間に合いませんでした。
初めて紅白に出演するより前に亡くなっていたそうです。
山口さんはラジオで、おじいちゃんにも紅白を見せてあげたかったと振り返っていました。
この話を聞いたとき、
成功した瞬間だけではなく、
「その姿を見せたかった人がいた」
という部分が強く残りました。
山口一郎さんが振り返った「谷から山」
山口さん自身、この一連の話を「谷から山」という流れとして語っていました。
生活に困り、
祖父母に助けてもらい、
音楽を続けるべきなのか迷っていた時代。
そこからデビューし、少しずつ活動が広がり、紅白へ。
結果だけを並べれば、
「夢を諦めずに努力して成功した」
という話にもできます。
でも、実際の話はそんなに単純ではなかったように感じます。
続けながら迷っていた。
家族に迷惑をかけていると感じていた。
それでも、完全にはやめられなかった。
その時間の積み重ねの先に、後から振り返れば「山」と呼べる場所があった。
そういう話なのだと思います。
先が見えないときには、今いる場所が「谷」なのかも分からない
人生の途中にいると、
今やっていることが正しいのか、
この先につながるのか、
なかなか分かりません。
山口さん自身も、20代のあの頃に、
将来自分が紅白に出るところまで行くと確信していたわけではなかったはずです。
だからこそ、この話は成功した人の昔話だけではなく、
「先が見えない時間をどう過ごすか」
という話にも聞こえました。
今回の記事の前に紹介した、20歳の相談者との話でも、山口さんは周囲と違う人生を歩く若者に対して、その人がすでに自分自身の道を選んできていることを伝えていました。
▶ 関連記事:人と違う人生でも、自分を信じろ|山口一郎さんが20歳の相談者に伝えたこと
その話と今回の20代のエピソードを並べると、山口さんがなぜあの相談者にあれほど強く言葉をかけていたのか、少し分かるような気がします。
山口さん自身にも、
「このままでいいのか」
と迷いながら進んでいた時代があったからなのかもしれません。
「谷」にいるときには、その先の景色は見えない
今が苦しいとき。
周囲だけが先に進んでいるように見えるとき。
自分の選択を疑ってしまうことがあります。
でも、人生を後から振り返ったとき、
「あそこが谷だった」
と言える日が来るのかもしれません。
その最中には、それが谷なのか、ただ道に迷っているだけなのかも分からない。
山口さんの祖父母との話を聞いていて、そんなことを考えました。
おばあちゃんから受け取ったお小遣い。
おじいちゃんが何も言わず渡してくれた札。
近所の人へ配るために買ってくれたデビューアルバム。
そして、見せることのできなかった紅白。
一つひとつは小さな出来事でも、後からつなげると、一人の人生の「谷から山」が見えてきます。
だから、この話を残しておきたいと思いました。
元になった放送
2026年8月11日放送
「サカナクション山口一郎のオールナイトニッポン」
この日のテーマは「人生山あり谷あり」。
山口一郎さん自身が、売れていなかった20代の頃から、祖父母との思い出、デビュー後について語った部分をもとに整理しています。
番組公式ページ
サカナクション山口一郎のオールナイトニッポン公式ページ
2026年8月11日の放送ページ
8月11日放送回をradikoで見る
※このページでは放送内容をそのまま転載するのではなく、公開されている内容をもとに、印象に残った話の流れを要約・整理しています。

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